夏の終りのハーモニーどころか夏の終わりの海でお腹の上にアレを乗せられて死にかけた話
こんにちは、スカラビジョンのヤマシタです。
あれはもう、6年ぐらい前の話でしょうか、僕が友人の手により死にかけた話をします。
僕がある保育園の卒園アルバム制作をご依頼されたお客様から
「あそこでもんじゃ屋をやっているのはヤマシタさんの同級生らしいよ」と。
それがきっかけで、中学を卒業して数十年。
大人になってから彼の営むもんじゃ店で再会しました。
再会のテンションと近所にある飲食店ということもあり、その気軽さから結構な頻度で通うようになりました。
そんなある日、「水槽に入れるゴンズイ玉を捕りたいので千葉の鵜原海岸に遊びに行かないか?」と提案されました。
ゴンズイとは毒を持ち群れて泳ぐ海の魚で、ひとかたまりになって泳ぐ様が玉のごとく「ゴンズイ玉」と呼ばれます。
「おお、いいねえ」なんて盛り上がってしまったのですが、今思えば、これが悲劇のはじまりでした。
海岸へGO
お盆をとっくに過ぎた9月の初旬、僕らはまだ日も明けぬ真夜中に、それぞれ2台の車に乗って、東京下町墨田区から鵜原海岸へ。
BBQのセットを組んで、午前中に肉を焼いてビールやワインなどを楽しみました。
日差しも結構な強度で、余裕で海に入ってはしゃぐことが出来ました。
途中、
- 連れてきたチワワとパピヨンのミックス犬を電柱のてっぺんから明らかに狙っている巨大なトンビ。
- 数十分に一度あらわれてタバコを1本ねだる正体不明なじいさん。
- 砂浜の階段下に落ちている謎の注射器。
ひとつひとつ理解して消化していくのが困難な要素もありましたが、まあ
「千葉ってそういうとこじゃね?」
と無理やり納得しつつBBQと海を楽しみました。
で、腹いっぱい食べて、お酒も飲んだらどうなると思いますか?
そう、眠くなるんです。
持参したチェアにガーっと全体重を預けて青空を仰ぎながら昼寝です。
ああ、チョー気持ちいい。
このまま空と海と1つになれる気がしました。
その時です、悪魔に取り憑かれたヤツが近づくのは。
海と1つどころか、別のものと1つになることになるとは。
その時事件は起きた
何かを企んでいる顔のマスターです。
もんじゃ屋を営んでいるアイツです。
手の平には水色にきらめく何やら珍しい生命体が乗っています。
しかし、僕はグースカ眠っています。
「へへへへ、えいっ!」
その手のひらからこぼれ落ちた物体が僕の無防備なお腹に着地した瞬間。
いたい!
というか、激痛!!!!
例えるなら、火が赤々とついた炭を直接お腹に乗せられた感じ。
乗った瞬間に激痛は走りました。
「うぎゃああああああああ!!!!」
と手で払いのけようとするも、なかなか落ちないその物体。
コロコロコロと僕のお腹を転がって落ちました。
その正体は
青い餃子、そう! そうじゃない!
正体は、刺されてから調べて判明したのですが
カツオノエボシ
これ、猛毒のクラゲです。
海の危険生物ベスト5にも入るような危険なクラゲでした。
以下のサイトでは3位でした(ヤバイだろ)
日本の海に潜む危険生物ランキング1位~8位まで【裏ランクも追加】
これを乗せるどころか触ろうと思ったのがすごい。
最初は僕がのたうち回る様子にゲラゲラ笑っていた同行者たちでした。
僕の「のたうち回り史上」もっとものたうち回った日だと思います。
海に入って患部を洗っても何しても痛みはおさまるどころか酷くなっていきます。
ちなみに処置方法としては
- まずは患部を海水で洗い流して
- 冷やして
- すぐ病院に行け
だそうです。
カツオノエボシに刺された場合、お酢をかけるのは絶対にやってはいけません。
お酢のせいで針が刺激されて余計に悪化してしまいます。
アルコールもいけません。かけてしまいました。
真水もいけません。かけてしまいました。
とにかく触らないようにして…さわってしまいました。
元サーファーだったというもんじゃ店マスターの義理の妹が
「サーファーの間ではクラゲに刺されたらこうやって砂で擦り込むのよ」
と、僕の腹を砂でゴリゴリこすってくれました。
痛い! 痛い!
この見事な逆効果の連続もあり、とにかく事態はヤバイ方向へ。
まず、呼吸が困難になってきました。
ヒッヒッヒッ、といった感じで浅くなり苦しくなっていきました。
さらには足の付け根と腕の付け根が徐々にこわばっていくのがわかりました。
その段階で僕のリアクション芸をゲラゲラ笑っていたまわりの仲間たちは
「あっ、これは死ぬほどマズい」
と察したのか、めちゃくちゃ慌てつつも僕を海岸から一番近い病院に連れて行ってくれました。
救急車もいつ来るか待てない状況。
車があってよかったし、お酒を飲まない人がいてよかった。
マスターも貝殻で足の裏をばっくり切っていたため、ついでに処置してもらおうと3名で病院に向かいました。
移動している最中も僕は死を覚悟しました。
それぐらい呼吸が苦しくて身体が硬直していくのがわかりました。
そして病院へ
病院に到着するやいなや、這うようにして進む僕を見た看護師さんは、すみやかに車椅子を貸してくれました。
すぐに処置室へ。
お医者さんに事情を話す僕らは海パン一丁の砂まみれです。
一人は呼吸困難。
もうひとりはサンダルがチャポチャポいうぐらいの血まみれ。
医者は冷静にこう言いました。
「あんたら、東京から来て何やってんの?」
僕らも「そうですそうです」とまったくの同意。
そして、患部に塗り薬で処置を施してもらい、点滴を打つこと1時間弱。
そのうちに呼吸困難も手足の硬直も徐々に無くなって来て、晴れて普通に歩けるようになりました。
マスターもとても落ち込んで、反省しているようでした。
以来、僕たちの間では
「知らない生命体を人のお腹に乗せてはならない」
という協定が結ばれたのでした。
しかし、あれだけ強烈なカツオノエボシを手で持ってきたはずなのに、なんで大丈夫だったのかとマスターに聞いたところ
「いや、実は俺の手の平もなんかめっちゃシビレてた(^_^;)」
と告白しておりました。
カツオノエボシの針は非常に短いので、刺激せずにそっと触る分には手のひらぐらいの厚い皮膚は貫通しなかったのだと思います。
なので、海水浴の際にはラッシュガードを着用するのがおすすめです。
僕のお腹の場合は、高いところから落ちた瞬間に針がビシッと反応して刺したのでしょうね。
皆さんもくれぐれも友人のお腹に見たこともない生物を落とさぬよう、ご注意ください。
波打ち際の死んだカツオノエボシも針と毒は残っているので絶対に触らないようにしましょうね。
刺された跡はポツポツと膨れ上がり、半年以上消えませんでした。
↓ちょっとグロい患部画像につき、ご注意
アナフィラキシーショックの恐怖
カツオノエボシもスズメバチ同様、1度目に刺された際に抗体が出来て、2度めに刺された時にアナフィラキシーショックを起こす事もあります。
アナフィラキシーというのは、アレルゲンに対して身体が反応し、呼吸困難や意識障害、複数の臓器に強い症状が現れる過剰反応のことです。
アレルゲンが体内に入ると数分で症状が現れたりするので、速やかに処置をしないと死にいたることもあります。
その後、別の友人たちと「旅行に行こう」と予定を立ててもらったのですが、このエピソードを話したところ、南の海に行く予定だった旅行先がいつの間にか
埼玉県の長瀞 に変わりました。
土屋太鳳気分で楽しかったお(うるさいよ)